2歳児死亡「園の責任は重い」「負担軽減へ努力」 小倉こども政策相:朝日新聞デジタルwww.asahi.com
2歳児、車内置き去り死亡事件。
小倉将信こども政策担当相は令和4年11月15日の閣議後会見で「保育園の方で登園管理をしてくだされば救えた命だと思っている。園の責任は重い」と述べました。
会見の全文など、検索してみましたが出てこなかったので、いろいろなニュース記事を見比べて、大臣の発言について考えてみました。
わざわざ言うべきことではない。
「園の責任は重い」。
この言葉だけは、保育の現場に携わっている人は大臣の口から聞きたくなかった言葉ではないでしょうか。
今さら何を、言わずもがな、現場の人たちは毎日毎日、考えています、思っています。
命を預かる仕事だと。
責任のある仕事だと。
いわばこども政策の長である大臣にわざわざ言われなくても分かっていることです。
彼は、全く現場のことを知らないし、考えてないし、想像力も働かない、ということを世間の保育関係者に知らしめてしまいました。
完全にセルフプロデュースの失敗です。
自己保身しか考えてないのがありありと分かります。
そして、慌てて全国に、自園の児童の欠席確認連絡の徹底を呼びかけました。
これが一体何を意味するか、きっと大臣は想像さえできていません。
全然わかっていない大臣のために、分かりやすく説明したいと思います。
【欠席確認連絡】の難しさ
欠席確認連絡。
これがいかに手間のかかる大変なことか。
出席確認はすぐにできます。
来ている子どもを名簿で照合すればいいだけです。
問題は、来ていない子どもが欠席かどうか確認するということです。
仮にある保育園で、
9:30までに欠席の連絡をしてくださいと、保護者に呼びかけていたとします。
例えば、いつも9:30をすぎて登園するご家庭はどうしますか?
来るだろうと思っていたら、来なかった、待っていても来ない、いつも登園する時間を過ぎても来ない、と思ったらいつもより大幅に遅れて登園してきた。
遅れるときは連絡をしてください、と園はお願いするしかありません。
そして、来ない間は誰かが常に、来るのか来ないのか気にしていないといけません、なんと生産性のない業務でしょうか。
例えば、9:30を過ぎても登園しないので、母親に連絡しました。仕事中なので電話には出られません。早急に折り返し連絡をもらえるように伝えます。父親に電話しました、電話がつながらず連絡がとれません。
いつまで経っても連絡がありません、そうこうしているうちに、15:00ごろ父親から電話があり、仕事が休みなので自宅で見ますとの連絡がありました。
このようなケースが同時多発で起こる可能性があります。その間、何度も連絡を試みるために保育士の手が割かれ、本来子どもの保育に充てられる人員が減ることになります。
アプリやメールなど、デジタルツールを導入しているところもあるでしょう。
しかし、いずれにせよ、保護者の協力がないと成り立ちません。
欠席の連絡は、保護者発信の保護者任せになります。
保育士から、「明日は休みですか?」と聞くのはとてもハードルが高いです。
「休めってことですか?」と誤解される可能性があります。
つまり、
さまざまな理由により、
この点において保育士に負担を求めるのは筋が違うと、僕は確信しています。
「園の責任が重い」と言う前に。
「園の責任が重い」という前に、大臣よりも毎日毎日子どもに密接に関わり、一所懸命保育している保育士が、どうして欠席連絡の確認を失念してしまうような状況になっているのか、想像力を働かせることをしない大臣の方が、よっぽど責任が重いです。
園にも責任があるとしたら、それ以上に大臣の発言が無責任です。
保護者の安全確認の責任が第一義である、との発言もあったようです。
それならば、
- まず保護者が欠席連絡を確実にするということを徹底できるように啓発するだけではなく、入園の際に「連絡なくトラブルがあった場合は園は責任を取らない」とする同意をとる
- 出欠の連絡を、手間と時間のかかる電話ではなく、アプリなどのシステムを早急に準備し現場に導入する。そのシステムを管理する人間の配置やそれにかかる経費について補助金を充てる
これくらいの対応をした上で、これまでよりもさらに注意深く、子どもの命を預かる責任を再度確認するのならば、保育士の方々は素直に受け入れることができるでしょう。
最後に…。
保育に携る人たちは、今回の事故でみなさん胸を痛めていると思います。
他人事ではなく、明日は我が身に起こることと、戦々恐々としているでしょう。
そんな保育士に寄り添えない大臣が、トップに立つのはとてもやるせないです。
やはり、現場を知る人間を霞ヶ関に送れない、保育士という職業の社会的地位の低さを、今回の発言からも直視せざるを得ませんでした。
賃金も上がらない、職場環境が改善しないなど根本的な理由はここにある気がします。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。